窯焚時には
アドレナリンがドクドクと
田中氏が北波多と相知の境にあたる場所で窯を開いたのは2012年のことでした。有田窯業大学校を卒業後、韓国へ焼物の修行に行き、帰国後、佐賀の自然坊窯の中川自然坊氏に師事、焼物づくりに専念していた時に転機が訪れました。「2011年に、先生が亡くなられたので、独立を決意しました。先生のところでは、唐津焼の技法と独立して窯をやっていく上で大切なことを学ばせてもらいました」と言う田中氏は、刷毛目や三島、粉引きなど、唐津焼の技法を駆使した作品を発表していますが、特にこだわりを持って向き合っているのが朝鮮唐津だそう。「朝鮮唐津は、2種類の釉薬を使い、火のあたり具合で生まれる様々な紋様が魅力の一つです。火を強く作品にあてることが大事ですが、焼けすぎると釉薬がダラダラと流れて思い描くようなものに仕上がらないこともあります。窯をどんどん焚いて強火をキープしている時は、炎のごとくアドレナリンが出てきますが、それだけではダメなんです。一方では冷静な頭も兼ね備えていないといけない。冷静な中に、フツフツとほとばしる熱い物が自分の中にあるみたいです。」一人でものづくりがしたい、
と考えた末に
出会った焼物の世界を
子供たちにも継承したい。
成形用の粘土は、辺りの山々から土を採取したものを使い、自身でつくります。工房にある土は、ぱっと見ただけでも色味がそれぞれに違い、実際に触ってみると、しっとりしていたり、ざらっとしていたり、と感触までも違います。それらを技法ごとに使い分けながら、作品がつくられていきます。