古唐津を手本に
土から自作を試みる
北波多インターを降りて県道を北へしばらく進むと右手に「北波多窯」が見えてきます。主の西川氏は唐津市内の出身ですが、早くから古唐津に興味を持ち、高校を卒業すると個性的な唐津焼で知られる田中佐次郎氏に弟子入り。10年あまり修行した後、2002年に独立して窯を開きました。
作陶する上で目指しているのは桃山から江戸初期にかけて焼かれた古唐津の再現。そのため古い陶片や出土品を仔細に分析し、絵の描き方や釉薬の施し方を日々研究し続けているそうです。
用いる土も自ら歩いて探したもの。臼で砕いた後、練って空気を追い出し、手間をかけて土作りをしています。その土については「唐津焼は粘土じゃなく、実は石からできているんです。古唐津の粒子をよく観察するとわかりますよ」と熱っぽく語り、本当に楽しそう。古唐津にかける思いが伝わってきます。
憧れ続けた古唐津を
北波多の地で再現したい
土や釉薬も昔のままなら、作り方も400年前の方法を追求。国内では唐津で初めて使われたという「蹴ろくろ」で成形し、薪を使った登り窯で焼き上げます。
「電動のように回転が一定せず、芯もぶれる蹴ろくろを使うことで味わいが出るんですよ。特に高台の削れ具合が面白くなりますね」といいます。
まさに古唐津に魅せられた人生を歩んできた西川氏。窯の場所も迷いなく発祥の地・北波多に定め、茶陶器をはじめお皿や酒器など日用の器を作っています。販売先は東京のギャラリーや各地の個展が主ですが、工房には展示室もあり、直接購入することもできます。ぜひ気軽にお訪ねください。熱心なお話の中から、奥深い古唐津の世界が見えてくるはずです。